Le cappelle Bufalini e Carafa: dall’odio dottrinale e cultuale tra domenicani e francescani alle rivalità artistiche
- 著 :荒木文果
- 所 属:理工学部
- 出版社:Campisano Editore (Roma)
- 初版年月日:2019/3/31
- 形 状:168ページ
- ISBN:978-8885795273
- 定 価:40 ユーロ
本書は、1480~90年代にローマで制作されたブファリーニ礼拝堂壁画(サンタ・マリア・イン・アラチェリ聖堂)とカラファ礼拝堂壁画(サンタ・マリア・ソプラ・ミネルヴァ聖堂)について、新しい見解をちりばめた野心的な一冊となっている。美術史分野の学術書に特化したローマのカンピサーノ社からイタリア語で出版された。
「永遠の都」と呼ばれ、古代から現代まで燦然と輝き続けてきたかのようなローマであるが、本書でとりあげる15世紀のローマは、現在の我々が抱くイメージとは様相を異にしていた。アヴィニョン捕囚と教会大分裂を経て、その町はすっかり文化的後進地となっていたのである。そして、壁画の規模、質、教皇の礼拝堂という場所の重要性から、15世紀ローマ最大の芸術事業と位置付けられるヴァチカンのシスティーナ礼拝堂壁画装飾のために、フィレンツェやウンブリアの画家たちが招聘されたように、当時のローマでは、多くの外来画家が注文主の要望に応じて腕を競った。本書の核をなすふたつの壁画が描かれたのは、システィーナ壁画完成直後であり、このたびは、ウンブリアの画家ベルナルド・ピントリッキオとフィレンツェの画家フィリッピーノ・リッピがそれぞれ制作にあたった。
本書は、システィーナ礼拝堂壁画装飾事業における画家間の競合意識に関する論考からはじまり、次に、詳細な壁画の観察と同時代史料の精読を通じて、ブファリーニ礼拝堂壁画とカラファ礼拝堂壁画にみられる特異な図像表現に対して個別に新しい解釈を提示する。そのうえで、両壁画の視覚的な類縁性を指摘し、両壁画が当時は一対のものとして認識されていたことを明らかにする。さらに本書では、両壁画の視覚的類縁性を、画家間の影響関係を超えて、二大托鉢修道会の競合という文化的枠組みのなかで理解するべきであると結論付ける。
冗長になりがちな概説は抑え、新しい主張を明快に論じたオールカラーの本書をぜひ手にとっていただきたい。