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ケンブリッジの卵
回る卵はなぜ立ち上がりジャンプするのか

  • 著  :下村裕
  • 所 属:法学部
  • 出版社:慶應義塾大学出版会
  • 初版年月日:2007
  • 形 状:四六判/272頁
  • ISBN:978-4-7664-1334-2
  • 定 価:2,100円(税込)

 ゆで卵をテーブルに置いて、勢いよく回すと卵はやがて立ち上がる。コロンブスが気づいていたかは定かでないが、この運動は、ゆで卵さえ作れば台所で確かめられる身近な現象である。しかし、その運動機構が解明できず、物理学の世界において長年の謎であった。また、信じ難いことに、回転卵は十分速く回されると立ち上がる途中でひとりでに小さくジャンプする。本書は、回る卵のこんな運動に関する研究物語である。
 実生活とは乖離した現象に関する難解な物理学の本か、と感じるかもしれない。しかし本当は、回転卵の運動解明を巡る科学者達の知的冒険物語なのである。塾派遣留学先のケンブリッジ大学において、モファット教授の講演会で偶然出会った回転卵の謎、コンサートがきっかけとなった共同研究、試行錯誤を繰り返す謎との格闘、成果を蒸留させた論文の掲載、そして帰国後に成功したジャンプ現象の実証等々を、エピソードを交えて記した。その他にも、共同研究で学んだこと、英国留学の様子、日本と英国の違い、そして大学で私が教えていることも書き添えてある。物理学と縁が無いと日頃思っている一般の読者の興味も喚起するであろう。
 「咲き誇るバラやチューリップは誰もが知っている美しい花である。しかし、庭のすみっこや歩き慣れている道端に目を向けると、そこにも愛らしい草花がひそやかに咲いているのである。」本書は、雑文ながらそんな草花を描いている。

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