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生成文法を学ぶ人のために

  • 著  :中井悟
  • 所 属:理工学部
  • 共著者:上田雅信、松岡和美
  • 出版社:世界思想社
  • 初版年月日:2004
  • 形 状:全集判/278頁
  • ISBN:978-4-7907-1079-0
  • 定 価:2,310円(税込)

 私は第5章の「生成文法と言語獲得研究」を担当しました。理論言語学と発達心理学の分野横断的なアプローチをとる言語研究のイメージを、少しでも具体的に提示することを目標として執筆しました。
 ノーム・チョムスキーによって提案された生成文法は、言語研究に自然科学(物理学や化学など)の手法を取り入れる新しいアプローチを追及し、進化生物学やコンピューターサイエンス等の諸分野とも密接な関連を持つ言語理論です。生成文法の解説書はたくさんありますが、中でもこの本は、生成文法の言語観・手法の科学哲学的解説と、心理言語学(子どもの言語発達・人間の脳が文をどう解析するか)の紹介が盛り込まれた、ユニークな構成の概論書です。
 第5章では、言語知識がヒトに生得的に備わっていると考える根拠となった言語データを提示し、「原理とパラメータのアプローチ」を用いた言語発達研究の代表的なものをとりあげ、理論構築の見地から考察すべき点にも解説を加えてあります。他の概論書ではあまり指摘がない点ですが、母語獲得の研究においては幼児から収集するデータを利用するため、調査の手法によく注意する必要があります。そこで本章では、実験研究とコーパス分析の2種類の研究方法のそれぞれの方法について、研究者が留意すべき点を示しました。全体を通して、実際の実験で使ったシナリオの一部や自作イラストを挿入し、調査の雰囲気が伝わりやすいように配慮しました。

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