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写真の存在論 ロラン・バルト『明るい部屋』の思想

  • 著  :荒金直人
  • 所 属:理工学部語学
  • 出版社:慶應義塾大学出版会
  • 初版年月日:2009
  • 形 状:四六判/168頁
  • ISBN:978-4-7664-1670-1
  • 定 価:2,310円(税込)

 写真についての哲学的考察です。哲学研究者にも学生や一般の方にも読んでもらえるものを書いたつもりです。前半は、写真論の古典であるロラン・バルト著『明るい部屋』の読解です。バルトの写真論を支える思想について解説します。後半は、前半部分の結論を出発点とした独自の考察です。写真が与えてくれる経験の構造について考えます。
 バルトの写真論の基盤となる考えを一言でまとめると、「写真は過去の存在を、意味としてではなく、存在として経験させる」となります。バルトの写真論を受け止めるためには、「存在」とは何か、「経験」とは何か、ということを問題にしなければなりません。写真経験の構造、そこで問題となる存在と経験の関係、その存在や経験の歴史性、「経験の経験」という構造を有するものとしての記憶、その記憶と写真との関係、などが私の考察のテーマです。私自身は、写真経験とはむしろ存在に「向かう」経験であり、また、意味の秩序に回収されまいとする経験であると考えます。

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